ひとりっ子介護 親の老後 私はこうして乗り越えた うちの介護のかたち


はじめに

2019年7月、母は老人ホームに入所した。 

コロナ禍に突入、面会はできず2022年に入ってから月に一度のズームが導入され、様子が伺い知れるようになった。

両親の不仲は、子供がいくつになっても見たくないものだが、母は父から逃げるように入所して、父からの電話も受けるこ

とを拒み、あの日からずーっとホーム暮らしだった。

コロナがまだ海の向こう中国での話だと楽観視している頃、父も入院。 

その後両親の再帰に絶望視した私は二人に念には念を押して了承を得て、実家じまいをした。

家を売却したことをいつも忘れている父は2021年9月に亡くなった。

母は父の葬式にも出なかった。

家族旅行や一家団欒の思い出もある。私の家族は多分人並の幸せであったはずなのに、いつから両親、家族はこんな

関係になってしまったのか。 母は「家族崩壊」ってよく口にしていたっけ・・・。それを聞くたび、責められているよう

その場から逃げたくなった。

父が病院を後にする支度をされている時、まだ暗かった窓の先に太陽が昇ってくるのを窓から眺めながらそんな昔のこと

をぼんやりと考えていた。

そして私と子供たちにだけ別れをして冥界へと旅立った。

その翌年2022年2月、「食べない・暴れる」とホームから連絡が来て、母80歳は2月8日に精神科病棟に50日ほど入

院し、すっかり寝たきりとなり退院して再び古巣の施設に戻った。

この時、久しぶりに母と会って私は驚いた。

そこにはすがるような暗い目をした悲しい顔の母に唖然としたのでした。


ホームは相変わらず感染予防のため面会は緩和することはなく、月一度のズームのみ。

さらにこの年の11月に吐き気や食欲不振などによる低ナトリウム血症になり20日間の入院。 

今後このようなことはたびたび起こり、入退院をくりかすことになるだろうという説明だった。

そしてそれは現実になり、3ヶ月後の2月末に同じような症状で点滴の日々が2週間続き、ついに3月に日赤に入院した。

痩せ細って枯れ枝のような手足。精神科に入院した時の驚きなんて非じゃない有様で、私は平静を装いながら動揺した。

目を瞑り車椅子の背もたれを倒し、母は今にでも逝ってしまいそうに弱っていて、でも何もできない、この先どうなるのだ

ろうと、とにかく不安でしかなかった。

母がこんなことになっているなんて、自分は一体何をしていたのだろう。


2023年4月に入院してもうすぐひと月となる頃、尿路感染を起こし、3回も発熱を繰り返した。 

点滴が入らなくなった時の意味を知り、延命の処置をどこまで行い、どこまでしたら止めるのか。

命をどこまで繋げるのかを決めるように説明された。

日赤の医師が口にするのは「うちは急性期医療の病院だから・・・」の言葉。

ここはいつまでも入院はできないこと、容態が落ち着いたら療養型の病院に転院すること。

その後、転院先の病院が見つかり先方と面談するようにと、病院のソーシャルワーカーから連絡がはいり、入院して3週

間し頃に、転院先の病院の担当者と面談し、病院の概要と入院に必要な書類などの説明を聞く。見学の申し出をして病棟

も見た。

比較的に新しく、明るい病院だったが、とても静かで談話室にいる患者さん一人を除いては誰の姿も見えなかった。

それと、談話室で外を見ていた一人の患者は私の父を思い出させた。

「一緒にいる時間はそんなにあるようには思えない、面会ができる病院なら少し遠くてもいい」そんな気持ちでいた気が

する。

これが、今現在私の母の介護についての状況になります。

私は両親と別居していたので、実家にいる両親の介護から始まり、母の施設への入所、独居となった父の介護、そして父の

入院、母がホームを嫌がり独居がスタート。のちにホームに入所し入退院を繰り返し療養病院に現在入院中・・・これが

我が家の、私ひとりっ子が歩んできた介護です。



ひとりっ子がする親の介護って

施設に入所している場合、同居の場合などあるけど、介護関連の連絡は手

続きや買い物の依頼など職場にも容赦なく入るし、在宅で親の介護では昼間はサポートが付蹴ることは可能でけれど、夜

間はひとりで見なければいけなくなるし、体力もメンタルもかなり必要になりますよね。

介護はある日突然始まることも 

困った事態が起きていきなり介護が始まることもあります。別居して

いた父が起こした事故で認知症が発覚・・・我が家で起こった介護の始まりでした。なので、情報過多から現状把握するま

での間に起きるいろんな意味でのショックに直面し、そして時間が経って、じゃあこれからどうしよう〜と壁にぶち当たる

までが第一段階。これらをひとつひとつ片付けていく間の精神的負担と身体的な負担、そして頭を抱える経済的な負担で

す。

大丈夫、大変だけどやれることからやっていけばいい

ひとりっ子さんはキーパーソン。なにかにつけていろんな人からどうするか聞かれます。すべて一人で担っているひとりっ

子さんは、いつも忙しくお疲れモードのことも少なくないですよね。あれもこれもで頭がパンクしそうになりますが、一

人でやれることには限りがあります。

今でききることを淡々とこなしていくことがいいです。私の場合は少し乱暴かもしれませんが、あまり思い出や感傷的な気

持ちにならないように、あえて感情を殺して、来るものは拒まず意識してひとつひとつ片付けていたように思います。 


親は在宅介護を望んでいる・・・

家で介護をするときは介護保険が適用されて収入によって自己負担1〜3割で利用できる訪問看護、訪問介護、入浴介護

など家に居ながら必要なサービスを利用し介護をすることを言います。

ちなみに、厚生労働省によると、高齢者が介護を受けたい場所は自宅で、男性は4割、女性は3割が自分の家で介護をして

ほしいと考えています。「国民生活基礎調査」

自分を産んでくれてここまでしてくれたことには感謝しかないけど、実際在宅介護についてはよく考えないといけませ

ん。

施設の勧めは焦らずゆっくりと・・・

公的機関運営の比較的に安く入居できる施設や、民間で高額な施設まで老人ホームはたくさんのタイプがあります。また、

入居条件も様々で要介護度や既往症により条件が違うので介護される側やする方に合ったホームを選ぶことが大事です。

私は親の介護を在宅で行うことはできないと判断して施設への入所を選びました。父は透析と認知症があったので病院。

そして母はショートステイ(自宅とホームを行ったり来たり)から老人保健施設を1度変えて入所し、そこで途中体調を

崩して2回入院をした後、現在は療養病院に入院しています。 (ショートステイとは1日単位で入所することができるサ

ービスです)

施設によっては本人が入所を拒否されることもあるかと思います。(父がそうでした)そんなときはショートステイのサー

ビスを利用して少しずつ慣れてもらったり、介護度が上がったタイミングで・・・や、一人でのトイレを失敗やできなくな

った時などにしようと目安を決めておくといいですね。

ショートステイのお迎えに来たが行きたくないと家から出てこない・・・と仕事中によく電話がかかってきましたが、い

ざ行ってみたら、「施設のお風呂は大きくて気持ちがいい」と気に入ってよく話してくれていましたし、家族も転倒など

しないように設備が整ったお風呂なら安心ですよね。 また、参加自由のイベントや同世代の方が多く、友達ができた方

もいます。 強制ではなく少しずつ焦らず急がず、ゆっくりと慣れてもらうのがコツかもしれませんよ。

介護度の訪問調査は同席して・・・

身体的機能や精神状況など訪問調査や主治医の意見書、看護師から普段の様子などのデータを基に軽いものからだと要支

援1〜3、要介護1〜5のレベルで示した介護度の指標のことです。この指標を基に受けられる介護保険サービスが決まり

ます。 介護度によって入所できないなど条件があるので、たとえば入院先での訪問調査でも同席することをお勧めします

。 それは、調査員の方を前にすると、高齢者の方は頑張ってしまうからです。大丈夫でなくても遠慮してか、そんなに状

態は悪くないと大半の方がお話してしまうからです。 普段から見ている看護師の方や、家族の方が注意深く普段のありの

ままを調査員に伝えるようにしたいです。 さらに、私の場合継続のための調査でしたが、前年度と比べて明らかに介護度

が増しているのに、介護度が軽くなってしまい、希望の施設の条件に合わなくなってしまったことがあります。 そんなと

きは市役所の介護保険課に再調査をしてもらうことができるので、わからない点や不服、間違いなどがあったなど、気にな

ることがあればどんどん担当者と話してくださいね。 介護度が上がると自己負担も増えますが使えるサービスも増える

ので頑張りましょう。


3つの不安とは・・・

①在宅・施設に関わらず施設や自業者、ケアマネジャーが計画したケアプランについてのやり取りは、ひとりっ子の場合

全てのキーマンとなり、決断し進めていかなけれればならないことへの身体的負担がかかるという不安。

また、在宅介護の場合起床から排泄、着替え、食事、入浴、夜間の寝返りを打たせるために数時間の起きて介助するなど

が必要で、これらを日中は介護サービスなどでヘルパーさんなどに頼むことができたとしても、夜間介護は一人で行わなく

てはならなくなり、結果として介護者の一人っ子さんが体調を崩したりすることも少なくないことからこの面でも身体的

不安がかなり重くかかることが想定できます。

☘️ケアプランとは?要支援者の場合「介護予防ケアプラン」、要介護の場合は「ケアプラン」と言い、地域包括支援セン

ターやケアマネージャーなどがその人の介護度に合わせて、利用できるサービスを考慮し週に何をどのくらい利用するかな

どの介護計画を示したものである。

②身体的負担が積み重なるとひとりっ子さんにも精神的ストレスが加わる場合がある。介護をされる人が認知症であれば

被害妄想・徘徊・暴言・暴行などの症状が出ることもあれば、症状に波があり頭がクリアでスムーズな会話ができたと思

えばそうでない時など振り回されてしまいよりいっそう滅入ってしまうケース。 私の場合はこれで本当に参りました。

前にも書きましたが、介護は突然始まることもあります。ひとりっ子さんのライフスタイルが一変してしまい、友人との付

き合いや趣味など制限が出てしまいひとりっ子さんが介護鬱を発症してしまい仕事に影響が出たり、ひどい場合介護離職

などをせざるを得ないこともあり得ます。また、親が子供への子離れができておらず、依存してくるケースもあるので、で

きるなら普段から話をしておくといいです。

③お金の不安は頭から離れない。介護保険サービスは利用できるが施設・在宅に関わらずオムツ代や食事代、ちょっとし

た娯楽やイベント・レジャー、衣服や雑貨など自己負担となる。年金で足りなければ親の貯金、さらにはひとりっ子さん

が親に仕送りなどをするしかない。

☘️老後に必要なお金の最低金額は、夫婦で月額平均約22万円に対し、国民年金平均額は6万円弱、厚生年金では14万ほど

が平均金額。厚生年金で計算しても毎月約2万円たりません。

親の介護のためにかかる費用を捻出し、介護者自身の生活、そして老後の準備もしなければならないのは容易なことでは

ありませんが、たとえ介護者が50歳で貯金がなくても意識持って少しでも今の家計を見直して資金を準備することはでき

るので諦めずに今からでも始めましょう。私もそのひとりです(汗)


親の介護による不安を解消するには・・・

一人で介護はしない。行政や医師など周りにあるものを巻き込めるだけ巻き込み「私は困っていますよー!」と遠慮や恥

ずかしさなどは捨ててオープンに相談します。 私は人と話すのが苦手でもこの戦法で人から人へ情報や疑問をぶつけなが

ら流されつつどうにかこうにかやってきました。

☘️方法
行政など他地域包括支援センターなど、相談できるところを作る

介護保険サービスを使う

介護保険サービスとは要支援や要介護の認定を受けた人が使えるサービスで、自己負担1〜3割で介護サービスを受けるこ

とができます。 

🏡居宅で・・・訪問介護・訪問看護・訪問リハビリ・訪問入浴など自宅で受けられる介護サービス

🏡通所する・・デイサービス、デイケアと呼ばれるもので、通い型の介護サービス。

🏡施設に入所する・・・特別養護老人ホーム・老人保健施設などの介護施設に民間の有料施設より安価で入居できる。

これらのサービスは具体的にはケアマネージャーとよく相談をして決めます。 ひとりっ子さんである事情や、仕事・身体

的な負担なども考慮して通所サービスの日数を連続にしたり、飛び石にしたり増やすなど、施設への入所についてもよく

相談してみると良いです。 また、ボランティアや地域の民生委員などに相談してみるのもグッドです。 経験豊富な相談

員が介護の辛さを理解してくれたり、介護の工夫を教えてくれるなどして、ストレスが和らぐこともあるかもしれません

ね。 私のケアマネージャーは、実家に様子を見に行ってくれたり、家族にはイエスとは言えない父に、私の代わりに説

得してくれたり、時には自分の経験談を私に聞かせてくれたりすることもあり、良き理解者で頼りになる方で心強かった

です。

軽減制度があることを知っていますか?

一人っ子が親の介護をする時は何かにつけて請求書は心配のたねです。費用が不足していた場合も、自分一人で拠出しなく

てはならないことも少なくありません。 もし介護費用が高額になってしまった場合は軽減制度を利用して介護費用を抑

えよう

ひとつは、高額介護サービス費という制度で、1カ月ごとに支払った利用者負担の合計額が、所得ごとに定められている負

担限度額を超えてしまった場合、超えた分を後から払い戻してもらえる制度です。

そのほかにも施設に入居する場合に所得が低い場合は、食費や居住費が安くなる負担限度額認定などの軽減制度があるの

で、費用が足りない時は行政などに利用できる軽減制度が無いかとにかく相談して、できるだけ経済的負担を軽くしましょ

う。また、介護施設と異なる性質のものですが、医療療養型病院というのがあります。病状が慢性期になった場合や、治療

よりも長期にわたる介護が必要になった高齢者が、医師の元にで看護、介護、リハビリなどの必要な医療を受けることが

出来る病院のことです。 私の母は急性期医療での入院でしたので、安定した頃に転院することになりました。 入院中の

病院で次の病院を探してくれたので本当に助かりました。 医療費、食事代は医療保険で決められた額を払い、オムツや

病衣、タオル、などはリースです。 医療行為がいつでも受けられてとにかく安心ですが、やはり費用もかかりますし、老

人ホームなど施設と違うのはレクリエーションやイベントなどはないので、楽しみがないことでしょうか。

まとめ
介護に正解も不正解もない。

介護をする側とされる側でギブアンドテイクもウィンウィンもなくて、出来ることを、

出来るだけ、出来る範囲ですることかなと。

だってやれることには限りがあるし。 

諦めずにやらなければいけないことの優先順位だけを見誤らないようにすれば、できな

いことは潔く諦めてしまっていいと思うのです。

私は、何かいつもと違う感情、涙が勝手に出たり、眠れないとか、深酒をしそうになるなど、普段と変わった様子の時、

自分は今どういう状態なのか? 私は身も心も疲れている。疲れ果てている?

そんな風に自分に聞いていました。こんなことがあったんだから仕方ないよ・・・なんて慰めたり。 

大切なことを最後は一人で決めることが多いひとりっ子は尚更、からだも頭もしっかり休ませて、介護鬱は回避したいもの

です。

だから、家の恥だ、恥ずかしいなんてどこ、け散らかせて、「知らぬ存ぜぬ、バカ結構」。 全力で周りの人を巻き込んで

助けてもらう。どんな選択肢があるのかわからないですもん、はじめてなんだから・・・。

自信ない、嫌だ、心配事、何か引っ掛かることがあれば、「私は〇〇したいと思っているけれどそういうのありです

か?」とダメ元で聞いてみていました。 

親不孝、薄情だと思われるんじゃないか・・・なんてこれもまた余計なプライド。

回りくどくなってしまいました・・・つい。

何が言いたいかというと、自分が大事。 自分が壊れてしまわないことが大事。 無理せず、出来ることを、出来るだけ、

出来る範囲でしてください・・・と言いたい。

母は毎日退屈だろう・・・。もっと高くていい老人ホームがいいに決まっている。でもお金はないし、夜間の介護は自分

にはできない。 自分の不甲斐なさに涙が出るほどですが・・・実際今でも考えれば泣けてきますが、出来ることを出来

るだけ・・・に尽きてしまうのでした。 

時間を作って面会に行くようにしていますが、顔を見るたび、「連れて帰れたらなぁ」と毎回心が痛みながら、今日も母に

会いに行くのです。

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